『投名状』鑑賞

春に日本で公開された『投名状』のDVDが出たので早速鑑賞。
話はいたって単純でした。その単純な話を1時間半かけて見せるので
ある意味丁寧な作りになっていた気がします。
オリジナルの『刺馬』を見ていない分、
素直な気持ちで鑑賞できたのもある意味で良かったかも知れません。
(以下はネタバレあり)



清軍の将軍パンの軍はクイ(魁)軍の裏切りで全滅。パンは一人生き残ります。
放浪の身のパンは彷徨う内に倒れ、ある女性に助けられます。
その夜パンはその女性と一夜を過ごします。
パンにとってその女性は地獄であった仏のような忘れられない存在になりました。
その後偶然盗賊団のチャンと出会い、そのチャンの紹介で
彼の義兄で盗賊団の頭目のアルフと知り合います。計らずも盗賊団に入ったパン。
そのアジトでパンは忘れられない存在となった一夜の女性と再会します。
しかし彼女は頭目アルフの妻だったのでした。

程なく盗賊団のアジとにクイ軍の部隊がやってきます。
食料や物資をクイ軍に略奪された盗賊団。
その様子を見て、パンはアルフに盗賊団を辞めて清軍に入ろうと提案。
軍ならば俸禄が貰えて、仲間の家族も安心して暮らせるとの提案に
アルフの心は動きます。しかし盗賊団の仲間の中にはパンを信用せず
「元軍人の言うことは信用できない」と反対する者もいました。
アルフは仲間のためにパンの提案を受け入れる事を決意。
ただし仲間達の為に、パンとチャンと三人で《投名状》の誓いを立てることにします。
この《投名状》が邦題『WAR ROADS』の原題です。
映画を見終えた後では、やはり『投名状』というタイトルの方が
邦題よりこの映画にピッタリだと思います。

この《投名状》。義兄弟の契りを交わす儀式ともいうのでしょうか?
それは互いに人を殺して義兄弟の契りを交わすというものです。
残酷な儀式ですが、殺人という重罪を犯すことによって
互いが互いを裏切らないという決意と覚悟を示すものなのだそうです。
ですから、元々中国では義兄弟の契りは重んじられますが、
ただの義兄弟の契りよりももっと重い契りといった感じなのでしょう。

とにかく《投名状》の契りを交わしたパン、アルフ、チャンの三人。
年齢からか、長兄がパン、次兄がアルフ、末弟がチャンとなりました。
パン大兄の提案に従い盗賊団は清軍に志願する事になります。
多くの者が三人に従う中、シーと他の数名はどうしてもパンが受け入れられず
そこで進むべき道を分かつ事にしたのでした。

パンはアルフとチャンを連れて清の大臣に会い、
目論見どおり一部隊を持つことに成功します。
その部隊で戦いに勝利した功績で大部隊を任されその後快進撃を続けるのでした。
しかし戦乱の早期終結のためとはいえ、
パンの進軍は軍令を無視してまで行われます。

蘇州攻略の際は籠城戦となり、城の内外の両軍とも疲弊しきっていました。
城外のパン軍は物資の供給を絶たれ、その打開のために
パンとチャンは食料の取り付けに憎むべきクイ軍と取引。
二人を待つアルフは単身で城内に潜入します。
潜入の直前、遠くアジトから妻が軍営にやってきます。
再会を喜ぶアルフ。彼女からお守りを貰い彼は城内へと向かうのでした。
その直後、食料と共にパンとチャンが帰還。
パンはアルフの妻を見つけ、半ば強引に彼女と関係を持つのでした。

アルフが約束の時間になっても戻らないためにパンは攻撃を開始しようとします。
まさに突撃の合図が出される寸前、城の門が開き城内の民が出てきます。
アルフの説得により城内の太平軍は降伏。開門したのでした。
民が去った後、残った太平軍を皆殺しにするように命じるパン。
アルフはそれを必死で止めます。
実は城内で太平軍のリーダーに会ったアルフは、
降伏開城の条件として太平軍兵の命の保障をアルフに頼み、
アルフはそれを約束した事でリーダーは自ら死を選んだのでした。

約束を守ろうとするアルフと、非情に徹して今後の進軍の為にそれを拒むパン。
パンの命令で意に反して太平軍の残兵に矢をつがえる清軍。
絶望の太平軍の中にはかつて別れた盗賊団のかつての仲間シーもいました。
アルフはその殺戮の間鎖で繋がれてどうすることも出来ませんでした。
約束も守れない奴は信も義も得られないと言うアルフと、
戦は騙し合いであり、彼らは兵士なのだからこれは正しい決断だと解くパン。
彼等の間に決定的な溝が出来た瞬間でした。

その後南京攻略を経て、総督の座に上り詰めたパン。
しかし、それは表向きのことで朝廷内部の大臣はパンの昇進を快く思わず、
密かにアルフとの不仲を利用してパンを抹殺する算段を始めていました。
パンはパンで政治的にアルフが己の野心の足かせになる事を思い、
密かにアルフを暗殺しようと企みます。
また、チャンはチャンでパンとアルフの妻の密会を知り、
そしてパンがアルフを殺そうとしている事にも気付いて
二人の不仲の原因が彼女であるとして、彼女を殺します。

しかしチャンの思いも虚しくアルフはパンの罠により既に殺されてしまいました。
そして総督就任の儀式に向かうパンの前にチャンが現れ、
また礼砲という目的で並んだ銃はパンに銃口が向けられるのでした。



この三人の義兄弟の数奇な運命は全て《投名状》から端を発します。
《投名状》。人を殺してまで結ぶ最も固い契り。
ただ私にはこの(話の中の)時代には陳腐な形式的な儀式に思えました。
なぜなら映画冒頭から軍と軍の先頭シーンとはいえ人が人を殺すのを
嫌というほど見せ付けられたからです。
もちろん平和で治安の行き届いたな時代なら殺人を犯せば
それは重大な事で互いが密告しあわないように一蓮托生な効力を持つでしょう。
でもこれだけ軍が城を襲い殺戮と略奪を繰り返し、また盗賊も村で同じ事をする時代。
そんな日常的に人が殺され人を殺している時代に、
今更盗賊が契りを守るために人を殺すことにどれだけの覚悟や重みがあったのか?

その証拠にチャンの科白で「パンは投名状を信じていなかった」とあります。
「信じているのはアルフとチャンだとパンが言った」とも。
本当に信じ合う気持ちがなければどんな事をしたとしても裏切る時には人は裏切る。
裏を返せばそんな儀式を行わずとも裏切らない奴は裏切らない。

結果パンはアルフを暗殺します。
その方法とは家来を使ってアルフにパンが暗殺されると吹き込み
刺客がパンを救いに向かったアルフを待ち伏せして殺すというものでした。
アルフは最後までパンを信じて裏切られたのです。
彼はわかっていたはずです。もうパンにとって己は必要とされないのだと。
パンが頼めば自分は身を引くつもりでもいたのでしょう。
でも結局はあんな形で裏切られることになった。
彼の最後の言葉「大兄(パンのこと)…」がパンの身を案じての言葉か
何故このような仕打ちをするのかという責めの言葉か判断しかねました。

いや、アルフの妻に関してパンは最初から裏切っていたとも言えます。
チャンはそれらを知り《投名状》の誓いを守るためパンを殺そうとします。
パンが徹頭徹尾の裏切り者で非情な野心家として描かれていたら
もっと話は心軽いものだったでしょう。
パンもまたアルフに対してなんの憂いもなく殺したわけではありませんでした。
仲間が、民が安心して平和に暮らせるようにしたい―
そこの思いは同じだったはずです。それはパンにもわかっていた…。
だからこそ彼を信じ《投名状》まで結んだのです。
しかし、それに向かう手段や信条があまりにもかけ離れすぎていた。

政府の官僚になり善政を敷く。一見現実的とも取れるパンの手段でしたが、
結局こちらも無謀な計画だったということが映画のラストでわかります。
アルフの義侠の心もパンの理屈も一理あると
必死で双方を繋ぎ止めようとしたチャンは結局それを果たせませんでした。

救いようのないラストで終わるこの映画。


チョッと視点を変えてみてみると、少し感想も変わります。
この映画の三人の主人公。パンとアルフとチャン。
パンはいわゆる「大義のためなら私情(家族も含め)は捨てる」の典型で、
日本の映画でも侍や近代の兵士や将校によく見られます。
アルフはあくまで「民の為に生き、義侠心を忘れない」のが信条で
こちらは中国の武侠などで英雄として描かれるタイプです。
チャンはその間でひたすら二人の兄を思い心を砕く。
こんな二人の兄の間に立つ彼は本当に気の毒ともいえます。

パンとアルフ。全く違ったタイプの二人ですが
この映画ではどちらも公平に描かれていると思います。
このどちらに共感を覚えるか?もしくは魅力を感じるか?
監督はそういうことも考えているような気がします。
国や時代によって人の見る目はさまざまですからね。

ちなみに私はアルフの方が好きです♪
ジェット・リーの濡れ場はソフトだったのでチョッと残念?(笑)

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Secret

師父

先程、ウォーロード見終わりました…。
この投名状っちゅうのは、実際にあった話しなんですか?
清朝の末期頃?
と言っても、西太后がまだ親政し始めた頃でしょうか?
本編の内容云々よりも、ジェット・リーの顔色の悪さが、気になって、気になって…病んでるのでしょうか?

イマイチな気分をスカッとさせる為に、今からチョコレートファイターを観ます!

プロフィール

どぅいちゃん

Author:どぅいちゃん
『射雕英雄伝』を見て武侠の世界に嵌りました。
パパこと東邪・黄薬師に心を奪われ、それ以来武侠の「イカレオジ専」担当です。
リアルな武侠仲間がいないのを憂いて、ゲリラ的に武侠布教活動を行っております。

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